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栗山 靖敏*; 岩下 芳久*; 広田 克也*; 早野 仁司*; 不破 康裕
Proceedings of 16th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.32 - 35, 2019/10
超伝導高周波加速空胴の高加速電界化の研究開発が世界の加速器研究機関で行われているが、空洞内表面に発生する欠陥が高加速電界化を阻害する要因となることが先行研究より明らかとなっている。そのため、超伝導空胴内表面の状態を光学的に可視化する「超伝導加速空胴の内面検査システム」の開発が行われ成果を挙げている。本研究では、近年発展が著しい画像処理技術を内面検査システムに適用し、欠陥発見手法の高度化を行った。内面検査用カメラで焦点位置を変化させながら取得した複数の画像から、深さ情報の抽出と画像合成を行った。また処理後の画像にパターン認識処理を施すことで、欠陥の自動検出が可能となった。これらを空胴内面検査システムに取り入れることで、欠陥探索のスキャン時間の短縮や欠陥形状の取得が可能になる。
平野 耕一郎; 近藤 恭弘; 川根 祐輔; 篠崎 信一; 三浦 昭彦; 森下 卓俊; 澤邊 祐希; 杉村 高志*; 内藤 富士雄*; Fang, Z.*; et al.
Proceedings of 12th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (インターネット), p.944 - 947, 2015/09
J-PARC加速器リニアックの運転には、ビーム電流を50mAに増強する必要があるため、2014年にJ-PARCリニアックのイオン源、RFQ、及び、MEBT1の改造を行った。RFチョパ空洞とビームスクレーパがRFQとDTLの間にあるMEBT1の領域に設置されている。50mAビーム運転においてビームロスが増加するため、電極の間隔やビームパイプの内径を拡げた新RFチョッパ空洞を製作して、置き換えを行った。また、RFチョッパによって蹴られた高負荷ビームを受けるため、2台の新しいスクレーパを設置した。本件では、RFチョッパシステムとスクレーパのビーム照射試験結果について報告する。
大内 伸夫; 赤岡 伸雄*; 浅野 博之*; 千代 悦司; 滑川 裕矢*; 鈴木 浩幸*; 植野 智晶*; 野口 修一*; 加古 永治*; 大内 徳人*; et al.
Proceedings of 4th International Workshop on the Utilisation and Reliability of High Power Proton Accelerators, p.175 - 183, 2005/11
加速器駆動核変換システム(ADS)ではエネルギー約1GeV,ビームパワー20-30MWの大強度陽子加速器が要求される。原研,KEK,三菱重工業,三菱電機は共同でADS用超伝導陽子リニアックの開発を2002年から実施している。本技術開発では、J-PARC計画用超伝導陽子リニアックの設計をベースに、972MHzクライオモジュールの開発並びに超伝導陽子リニアックのシステム設計を行っている。クライオモジュールの開発においては、最大表面電界30MV/mの達成を目標としてクライオモジュールの試作,試験を実施している。空洞単体試験においては、2台の空洞について最大表面電界32, 34MV/mを達成した。2004年にはクライオモジュールの本格的な試験を実施し、最終目標値の達成を目指す。超伝導陽子リニアックのシステム設計では、エネルギー1001500MeV領域のビーム軌道解析を実施した。その結果、超伝導リニアックの構成は、10種類の超伝導空洞,クライオモジュール総数106台,全長565mとなった。低エネルギー部では高エネルギー部と比較して加速効率がかなり低下していることが判明した。
堀 利彦*; 千代 悦司; 山崎 正義*; 鈴木 浩幸*; 長谷川 和男
平成16年度大阪大学総合技術研究会報告集(CD-ROM), 4 Pages, 2005/03
972MHz超伝導加速空洞のプロトタイプが製作され、この大電力試験が2004/10月より本格的に開始された。この試験に先立ち要求されたRF性能を十分満足できるよう(1)RF出力電力のパルス平坦部サグを改善するためのフィードフォワード方式でのクライストロン励振システム,(2)空洞供給電力の調整はカソード電圧可変方式で行うこと、の2つの新たな方式を採用しテストスタンドを運用した。結果、従来よりも安定で継続的な大電力RFの供給を行うことに成功し、3ms(長)パルス,300kW出力運転時の最適なマシンパラメータを確立することができた。
長谷川 和男; 大内 伸夫; 千代 悦司; 加古 永治*; 野口 修一*; 大内 徳人*; 宍戸 寿郎*; 土屋 清澄*
Proceedings of 34th ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop on High Power Superconducting Ion, Proton and Multi-Species Linacs (HPSL 2005) (Internet), 5 Pages, 2005/00
原研は、高エネルギー加速器研究機構と共同で大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設を行っている。この第1期計画の加速器は、400MeVのリニアック(線形加速器),3GeVシンクロトロン,50GeVシンクロトロンの3基から構成される。第2期計画では、400MeVから600MeVまでの超伝導リニアックを建設し、放射性廃棄物の核変換実験に用いる予定である。その開発研究として、超伝導空洞を内蔵するクライオモジュールの設計と製作試験を進めており、これまでに2Kの冷却に成功した。ここではJ-PARC計画での超伝導リニアックの開発状況について報告する。
株本 裕史; 竹内 末広; 松田 誠; 仲野谷 孝充
第17回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集, p.135 - 137, 2004/06
原研タンデム加速器では短寿命核,安定核ビームを発生するKEK・原研共同研究施設を建設している。2004年度中にエネルギー1.0MeV/核子で運転を開始する予定であるが、将来的にはイオンをブースターで再加速し約7.0MeV/核子のビームを得る計画を立案している。イオンをブースターで再加速するためには2.0MeV/核子まで加速する必要があり、前段加速器としてLow超伝導加速空洞の開発を進めている。ブースターは共振周波数129.8MHzの超伝導リニアックで、40個の空洞から構成されている。空洞は2ギャップの同軸1/4波長型共振器で、最適ビーム速度optは光速の10%に設計されている。このopt=10%空洞の前段から8個を開発中の3ギャップ同軸2芯1/4波長型共振器(opt=約6%)に置き換え、1.0MeV/核子のイオンを2.0MeV/核子まで加速する。さらにopt=10%空洞を後段に4個追加し、合計36個のopt=10%空洞で再加速すればクーロン障壁を越えるエネルギー約7.0MeV/核子の短寿命核,安定核ビームを得ることができる。現在、モデル空洞で設計の検討を行っており、年度内にニオビウムでプロトタイプを製作する予定である。
加古 永治*; 野口 修一*; 宍戸 寿郎*; 浅野 博之*; 千代 悦司; 鈴木 浩幸*; 堀 利彦*; 山崎 正義*
Proceedings of 28th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.324 - 326, 2004/06
ディスク型セラミック窓を有する同軸タイプの高周波入力結合器が、設計・製作された。2本の入力結合器は真空排気装置を備えた結合導波管に取付けられ、972MHzのパルス高周波源を用いて大電力試験が行われた。その結果として、0.6ミリ秒のパルス幅で25Hzの繰返し運転時に、入力結合器への投入高周波電力として、最大2.2MWが達成された。
松田 誠; 竹内 末広; 月橋 芳廣; 堀江 活三; 大内 勲; 花島 進; 阿部 信市; 石崎 暢洋; 田山 豪一; 仲野谷 孝充; et al.
第17回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集, p.1 - 4, 2004/00
原研タンデム加速器では昨年度、加速管をコンプレスドジオメトリ型の加速管へ更新した。加速管内の超音波及び高圧純水洗浄の効果により、わずか1週間程のコンディショニングで更新前の約16MVの端子電圧を達成することができた。充分なコンディショニング時間を確保できなかったが、1MV及び2MVユニットでは平均で110%の電圧を達成し、フルカラムによる電圧上昇試験で18.2MVを達成した。そのほか強力なターミナルイオン源への更新のために入射系の改造を行うべく準備を進めており、昨年度ガスストリッパー装置の撤去を行った。短寿命核加速施設は昨年度までの3年間で施設の建設及び装置の設置はほぼ終了し、今年度中の短寿命核の加速実験を目指して装置全体の立ち上げ及びインターロックなどの安全装置の製作を現在行っている。また短寿命核加速施設からの1MeV/uのビームを既存の超電導ブースターで加速できるように現在のブースターの前段部に=6%のlow空洞を設置し最大57MeV/uまで加速する計画を進めている。研究会ではこのほかに昨年度のタンデム加速器施設の運転、整備の状況について報告する。
長谷川 和男; 大強度陽子加速器リニアックグループ
Proceedings of 28th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.66 - 68, 2003/08
日本原子力研究所(原研)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、大強度陽子加速器計画(J-PARC計画)を共同で推進している。加速器はリニアック,3GeVシンクロトロン、及び50GeVシンクロトロンから構成され、それぞれについて開発,建設を行っている。リニアックはイオン源,RFQ,DTL,SDTL,ACSの加速構造と、高周波源,制御機器,モニター等の周辺機器から構成される。イオン源では、磁気フィルターや電極の最適化により引き出し電流の向上を図った。RFQ及びそれに続くビーム輸送系までは、KEKにおいて加速試験を行い、ビームの特性測定やチョッパーによるビームのOn/Off制御試験を行い、良好な特性であることが確認できた。これに続くDTL空洞のビーム加速の準備として、設置及び調整を進めている。本報告では、これらJ-PARC用リニアックの各構成機器について、その現状を報告する。
大内 伸夫; 赤岡 伸雄*; 浅野 博之*; 千代 悦司; 長谷川 和男; 竹田 修; 吉川 博; 松岡 雅則*; 大谷 利宏*; 加古 永治*; et al.
Proceedings of 11th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-11) (CD-ROM), 6 Pages, 2003/04
加速器駆動核変換システム(ADS)ではエネルギー約1GeV,ビームパワー数十MWの大強度陽子ビームが要求される。超伝導陽子線型加速器は大強度陽子ビームを発生させる最も有望なオプションである。原研では、超伝導陽子線型加速器のR&Dを1995年にKEKと共同で開始した。R&Dの第1ステップとして、単セル及び5セルの(ビームの速度と光速の比)=0.5, 0.6, 0.9の空洞の試作を行った。試験の結果は良好であり、大強度陽子加速器に適用可能であることが示された。次のステップとして、クライオモジュール内での空洞性能を実証するために、クライオモジュール試作器を製作し、予備試験において設計電場強度を実現した。大強度陽子加速器計画(J-PARC)では、エネルギー領域400600MeVにおいて超伝導陽子線型加速器を計画しており、そのシステム設計を実施した。
青 寛幸; 林崎 規託*; Paramonov, V.*
Proceedings of 21st International Linear Accelerator Conference, p.82 - 84, 2003/00
ACS型加速空洞は統合計画リニアックの結合空洞型加速管(190-400MeV)として開発されてきた。空洞形状の二次元,三次元電磁場解析コードを用いた設計はほぼ終了している。これら解析と平行して、加速空洞のアルミ製モデル(二分の一スケール)を製作し、電磁場測定による解析結果の確認を行っている。このアルミモデルを用いて量産時を考慮した細部の設計の修正を行い、併せて所定性能を得るための加工,調整の手順等を検証する予定である。本発表においてはこれらモデル測定の結果と最近の開発状況を、加速空洞実機(バンチャー空洞:190MeV)製作の過程で行ったフルスケールモデルでの試験結果を含めて報告する。
青 寛幸; 林崎 規託*
Proceedings of 27th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.195 - 197, 2002/08
大強度陽子加速器計画における200-400MeVの常伝導加速管である結合空洞型加速空洞のACS型加速空洞の開発について報告する。まず、ハーフスケールのアルミモデルによる測定を実機製作に向けたR&Dの一環として進めている。この結果からは、本ACS構造での高周波測定の問題点として、測定用端版の接触の重要性、正確な測定には空洞本体、端版両方の平面度確保が本構造の場合は特に重要であることがわかってきた。あわせてアルミモデル量産時の製作精度による周波数のばらつきの評価結果,実機バンチャー空洞の試験切削での高周波測定の結果など、量産に関連する測定結果についても報告する。
竹内 末広
KEK Proceedings 2000-23, p.16 - 20, 2001/02
原研東海研のタンデム加速器の後段加速器としての超伝導ブースターは1994年4月に完成以来重大な故障やトラブルなく順調に稼働を続けており、重イオンビームを使った核物理・物質科学の研究に貢献してきている。超伝導空洞の現在の性能を中心に、稼働状況、各部の性能、これまであったトラブル等の現状報告をする。また近年行っているECR(電子サイクロトロン共鳴)放電による超伝導空洞の表面処理の研究について最近の結果を報告する。
技術協力課*
JNC TN1400 2000-007, 100 Pages, 2000/07
機構は、大学及び研究機関(以下「大学等」という。)との研究協力の推進を図るため、平成11年度から核燃料サイクル公募型研究推進制度を発足させた。同制度は、機構が取り組む核燃料サイクル分野の研究開発において、大学等の研究者から、広く先見的、独創的でかつ原則として機構の施設及び設備を利用する基礎・基盤的研究テーマを公募する。応募者には研究に主体的に取り組んで頂き、機構の研究者と外部の研究者との交流、情報交換、成果の公表等により、機構の研究環境の活性化を図り、もって基礎・基盤的研究開発を効率的に推進することを目的とする。大学等の研究者から提案して頂いた研究テーマは、外部の専門家を中心とする選考委員会で選考している。本報告書は、平成11年度に実施した高速増殖炉関係、核燃料サイクル関係及び環境技術関係の核燃料サイクル公募型研究に関する11件の研究テーマの実施結果についてその概要をまとめたものである。
大津 宏康*; 田中 誠*; 土山 富広*
JNC TY8400 2000-006, 45 Pages, 2000/03
サイクル機構では、地層処分研究に係わる天然バリアの性能評価において、我が国の岩盤を亀裂ネットワークによりモデル化するために、我が国の岩盤における亀裂特性について調査研究を進めてきた。しかし、これまでに得られた情報は、釜石鉱山をはじめとした花崗岩が主体で他地域や異岩種に関する情報が少なく、我が国の岩盤における亀裂特性を論ずる上で十分でない。そこで、本研究では、日本全国のトンネルや地下空洞で測定された亀裂データを利用して我が国の岩盤における亀裂特性を明らかにするとともに、亀裂ネットワークモデルの信頼性について検討することを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き日本全国のトンネル、大規模地下空洞、ダム基礎など10サイトで観察された亀裂データについて亀裂データベースを作成し亀裂特性の評価を実施した。その結果、亀裂のトレース長に関しては、数m数100mのスケールにおいてはトレース長の累積頻度が岩種に拘わらず対数軸上でほぼ一直線上に分布することがわかった。すなわち、第2次取りまとめで採用した仮定、亀裂の大きさは、べき乗分布に従う。の妥当性を裏付ける結果が得られた。
松井 裕哉; 前田 信行; 瀬戸 政宏*
JNC TY7430 2000-001, 57 Pages, 2000/03
大規模地下空洞や大深度地下構造物の建設は、空洞周辺岩盤が本来持っている力学的・水理学的な物性を変化させ、空洞の安定性や地下水流動へ影響を及ぼす。資源環境技術総合研究所とサイクル機構は、岩盤の力学的安定性に関する調査方法や評価方法をテーマとして、平成元年度より共同研究を実施している。平成10年度から第4フェーズとして、岩盤空洞の安定性に関する評価方法の検討というテーマで、主として掘削影響領域を評価するための基礎データとなる初期応力状態や二次応力状態の計測・評価手法などについて検討することとした。本年度は、東濃鉱山の地表から掘削した深度約200mのボーリング孔において、AE法、DRAによる三次元初期応力測定およびAE法と水圧破砕法による初期応力測定を実施し、三次元的な初期応力状態を把握するとともに初期応力状態の評価手法の適用性について検討した。それらの結果の概要について、以下に述べる。・鉛直方向の応力値は、堆積岩部では推定される土被り圧とほぼ等しく、花崗岩部ではそれより少し大きい。・水平最大主応力値は、深度と共にほぼ直線的に増加し、その勾配は花崗岩部の方が大きい傾向にあった。・水平最大主応力値は、堆積岩部では概ねN-SN45 Wで、花崗岩部ではほぼN45°W方向であった。・応力環境については、堆積岩部で遷移型(H=h)、花崗岩部では遷移型もしくは横ずれ断層型(HhV)の応力環境であった。・今回用いたAE法、DRAおよび水圧破砕法は初期応力測定手法としての適用性があり、AE法と水圧破砕法を組み合わせた三次元的な応力状態の評価方法は有効であることが示された。
向井 将一; 上野 文義
JNC TN9400 2000-017, 10 Pages, 2000/03
キャビティの生成・成長挙動に関する研究は,クリープ試験により得られた破断後の試験片の破面観察,あるいは中断試験で得られた試料を観察することにより行われることが多いが,結晶粒界上に発生した1ミクロン程度のキャビティの成長挙動を連続観察により経時的に把握することは容易ではない.数値計算によるシミュレーションは観察が困難な材料内部の局所的な挙動を連続的に追跡できるため,キャビティの成長挙動を検討する上で有効な手段となることが考えられる.本研究では,結晶粒界上に発生したキャビティの成長挙動について拡散方程式を用いた数値シミュレーションを試み,表面拡散/粒界拡散,応力等の因子がキャビティの成長におよぼす影響について以下の知見を得た.(1) 粒界拡散が表面拡散に比べ十分大きい場合には,キャビティはき裂形状に遷移する.一方,表面拡散が粒界拡散に比べ十分大きい場合には,キャビティは初期形状を保ちながら成長する.(2)粒界拡散が表面拡散に比べ十分大きい場合には,粒界に作用する垂直応力に誘起された粒界拡散によりキャビティ先端部付近の成長速度が著しく加速される.(3)表面拡散が粒界拡散に比べ十分大きい場合には,キャビティ表面での化学ポテンシャルの分布はほぼ均一であるが,粒界拡散が表面拡散に比べ大きくなるにつれて,キャビティ先端部での化学ポテンシャルの勾配が大きくなる.
大和田 仁*; 三原 守弘; 入矢 桂史郎*; 松井 淳*
JNC TN8400 99-057, 43 Pages, 2000/03
高レベル放射性廃棄物ならびにTRU廃棄物の地層処分にはセメント系材料の使用が考えられている。しかし、セメント系材料からの浸出液はpHが高く、カルシウム濃度も高いために、周辺の岩盤や緩衝材を変質させてしまう。そのため、放射性核種の溶解度や分配係数などが変化し、核種の移行に影響を及ぼすことが懸念されている。これらの影響を抑制する対策として、現在、浸出液のpHの低いセメント系材料の使用が考えられている。本研究では、まず上述の低アルカリ性セメントの必要性についてまとめ、さらにセメントの低アルカリ性化の考え方を整理するとともに、実用性に向けて必要となる課題を抽出した。さらに、本研究では、抽出した課題に基づいてセメントペーストの浸出試験、モルタルの流動性試験ならびに、モルタルとコンクリートの模擬構造物への打設試験を行った。セメントペーストを用いた浸出試験結果から、ポゾラン材料を添加したセメント(HFSC)の低アルカリ性化を確認した。また、モルタルの流動性試験の結果から、実用性評価に用いるセメントの配合を検討した。さらに、模擬構造物への打設試験によって、得られた低アルカリ性セメントの実用性を評価した。これらの検討の結果、シリカフォーム(SF)およびフライアッシュ(FA)を添加することでセメントからの浸出液のpHを下げられることが分かった。また、良好なワーカビリチーを得るためにはSFとFAとを同時に添加する必要があることが明らかになった。さらに、実用性の評価の結果、SFとFAとを同時に加えたセメントは、普通ポルトランドセメントと同等のワーカビリチーおよび強度を示した。この結果から、HFSCはポルトランドセメントと同等の実用性を備えていることが示された。
石島 洋二*
JNC TJ8400 2000-016, 54 Pages, 2000/02
地下数百mの深部に建設される高放射性廃棄物の処分空洞を軟弱な堆積岩に設けた場合には、空洞周囲に緩み域が発達することは避けられない。この場合、空洞の安定性だけでなく、緩み域の存在がもたらすシール性能の低下も問題になる。緩みの評価を正確に行うには、深部空洞の周囲に生じる応力・ひずみ状態を正確に予測する手法を確立しなければならない。本研究は、この予測手法の確立を目指したものである。このために、空洞を持った実岩石から成る模型岩盤に対し、地下に建設した空洞が置かれる3軸地圧応力を載荷したときに現れる変形・破壊を観察し、一方で、これを予測する数値解析手法の開発を試みた。このために、次の3つの項目について研究を実施した。(1)岩盤材料の構成式の精密化(2)空洞を持った岩盤模型を3軸載荷する方法の確立とそれによる模型試験の実施(3)空洞周辺の破壊を含む変形予測する解析手法の開発(1)については、溶結凝灰岩を用いた封圧下の引張試験が中心とした室内試験を実施し、以下の成果が得られた。a)一軸引張試験、封圧下の一軸引張試験とも、引張破面が供試体中央部に形成されるような試験技術を開発した。b)引張強度tは封圧pcとともに小さくなり、両者の間には、t=0.306pc-1.61の式があてはまる。(2)については3軸岩盤模型試験を実施し、以下の結果が得られた。a)最小主応力が小さいと、円孔上下部に引張き裂が生じる。しかし、最小主応力が1.0MPa以上になると引張き裂は発生しなくなる。みかけの軸応力が増すにつれて、円孔の左右側壁に楔状の破壊域が現れる。さらに応力が増すと、この破壊域の先端から12本の破面が発達し、模型ブロックを貫通することによりブロックが破断する。b)みかけの軸応力-みかけの軸ひずみ線図は、最小主応力よる次のような影響を受ける。1.最小主応力が大きくなるにつれて、最大主応力の最大値(強度)が増す。2.最小主応力が大きくなるにつれて、みかけの軸応力が最大値に達した後の応力低下量が小さくなり、また、線図の傾きが緩くなる。これらは、いわゆる封圧効果を表している。3.最小主応力が僅かでも作用すると、みかけの軸応力の最大値のばらつきが小さくなる。(3)については弾塑性解析コードを開発し、以下の結果が得られた。a)破壊の発生場所と破壊のタイプは模型実験結果と一致し、最小主応力が小さいと
笹本 広; 油井 三和; Randolph C Arthu*
JNC TN8400 99-074, 84 Pages, 1999/12
東濃鉱山における原位置試験は、主に第三紀堆積岩を対象として行われている。新第三紀堆積岩中の地下水の地球化学的調査により、主に以下の点が明らかになった。地下水の起源は、降水である。深部の地下水は、還元性である。第三紀堆積岩下部の地下水は、14C年代測定から、13,000年15,000年程度の年代が推定される比較的古い地下水である。比較的浅部の地下水はCa-Na-HCO3型であるが、より深部になるとNa-HCO3型になるような深度方向での水質タイプの変化が認められる。上記の様な地球化学的特性を示す東濃鉱山の第三紀堆積岩中の地下水に関して、地下水の起源と地下水-岩石反応の進展を考慮した地球化学平衡モデルをもとに、地下水水質のモデル化を試みた。その結果、土壌中での炭酸分圧の値、岩体中での以下の鉱物を平衡と仮定することで地下水のpH、Ehおよび主要イオン(Si, Na, Ca, K, Al, 炭酸および硫酸)濃度について、実測値をほぼ近似することができた。・土壌中での炭酸分圧: logPco2 = -1.0・岩体中での平衡鉱物:玉随(Si濃度)、アルバイト(Na濃度), カオリナイト(Al濃度), 方解石(Caおよび炭酸濃度), 白雲母(K濃度), 黄鉄鉱(硫酸濃度、Eh)しかしながら、東濃サイトの地質情報は、地下水水質形成モデルを構築する上で必ずしも十分であるとは言えない。特に、より詳細な鉱物データ(たとえば、斜長石、粘土鉱物や沸石に関する詳細なデータなど)は、モデルを改良する上で必要である。したがって、モデルの中で考慮する主要な反応については、再検討する必要があるかもしれない。本報告書では、代替モデルの一つとして、室内での岩石-水反応試験結果をもとにイオン交換平衡定数を求め、イオン交換反応を考慮した地下水水質のモデル化も試みた。しかしながら、イオン交換反応を考慮したモデルについては、今後さらに検討を要する。